【女性の安全と尊厳を求める0923新宿マーチ】参加者独占インタビュー!

目次

ひとりひとりのマーチ

小綠

いや〜〜マーチは始まる前から終わってまで、とんでもなく色んなことがありましたね!
ではここからは、皆さんの個人的に言いたいことをお話していただきます! どなたからでも大丈夫ですよ〜。

詩織さん

詩織さん

じゃあ私からいいですか?

小綠

はい、詩織さん。では、詩織さんの個人的に、是非話したいことはなんでしょうか?

詩織さん

お茶に行く皆と別れて新宿駅まで帰る途中、遠方から参加した、Xを見る専の参加者の方と2人でお話をしたんです。
普段は自らあまり発信はしないけど、参加して良かったと言ってくれました。
参加したけど言えない声を、その人の行動を伝えたいと思いました。

小綠

その方は不特定多数に発信しないことを選択した訳ですが、詩織さんは何故みんなに伝えなければと思ったんでしょうか?

詩織さん

その方はきっと誰かには知ってほしいと思ったから、私に話してくれたんじゃないかなと思ったんですよね。

小綠

でもこの話は詩織さんがしなければ、誰も知らないままだし文字にもならなかったですよね。

詩織さん

そう言われると、仰る通りですね。私は自分自身、Xで発信してますが、多くの人に届いているという実感は持っていません。ただ届いてほしいと強く思っている。
だから見る専だけど勇気を出してマーチに来てくれた方の思いが、みんなに届いてほしいと私が思ったんです。

小綠

発信が多くのひとに届いてほしいっていう承認欲求は、ごく普通の感情だと思います。私もブログ書いてるのでそう思います。

詩織さん

というより、この話題が本当に重要だからですね。
重要だからこそ、より多くのひとに届いてほしいというか、届かないと危険です。そして私に届いた思いは、更に多くの人に届いてほしいと思った。
ひとりの思いも漏らしたくないと思ったんです。この問題に対する一人一人の思いが、全て大事だって思うから。

小綠

確かにおっしゃる通り、この問題は日本在住のすべての女に関係あります。ああ……何というか、詩織さんは思考回路自体がマーチみたいです。詩織さんの手の届く範囲、どんなに小さい女の声も無かったことにはならないんですね。

詩織さん

同じ場所にいられない人に、どうやって参加してもらえるかは常に考えるようになったんです。
今回のマーチの後、X上ではリポスト、引用リポストとか、いいねが多く集まるのに、実際は20人しか集まらないじゃないかって言われたんですけど、女性は様々な理由で実際に街中で集まるのはかなりのリスクがあるんです。

小綠

えー!! それ言ったの絶対男でしょ⁉︎

詩織さん

そうです!! 今回のデモも無断で写真を撮られ、Xにその写真を挙げられて年齢や容姿を揶揄する言葉を言われたりしました。
顔を押さえたとか、女として輝いている人がいないとか!!

小綠

脅迫とルッキズム!!!!
いつもの女性差別とはいえ、参加してる皆さんには実際に加害されるかもしれないという新鮮な恐怖ですよね。
今後デモやマーチを諦めるには、十分すぎる攻撃です。

詩織さん

実際に集まれない理由はそれだけじゃなくて、体調などで人混みの中には行けない女性、小さい子供がいて体の自由が効かない女性、家族の世話をしなければいけない女性がいます。
彼女達はマーチの場所と時間に合わせることはできません。
でも新宿でマーチをしている私たちには、その場にいない彼女達の声が確かに届いていました。

小綠

X上でコールを募ったっていうお話ですね?

詩織さん

コールもそうですし、こむぎさんがインスタライブでマーチの様子を中継したんです。
私は見てなかったんですけど、それに対してコメントをしてくださる方がたくさんいました。次マーチをするときには、コメントを読み上げたいってこむぎさんが仰ってました。

小綠

おお! そうか、現場には行けなくても、スマホ上でマーチの様子を見れる人は沢山いたってことですね!
それは確かに本当の参加者は20人どころじゃないですね。

詩織さん

そうなんです。でもその場にいない人には、現場にいない参加者の存在は見えません。でも彼女達の存在は知られるべきだし、彼女達の声を路上で伝えなければならないんです。
何故ならここにいないあなたとも、私は一緒に歩いているんだから!
だってくやしいじゃないですか! 何も知らない男に参加者がたった20人とか言われるの!!

小綠

ほんま俺まで悔しくなってきました!!!!
詩織さんは悔しさを糧に、たとえ実際には手が届かない距離にいる女達の思いを、手繰り寄せる心意気を持っているのが伝わりました!!!!
ありがとうございました!

ミユオさん

ミユオさん

詩織さんのお話、わたしもとっても共感することいっぱいありました。
上手く話せるかわかりませんが、次わたしいいですか?

小綠

もちろんです! ではミユオさんの個人的に是非話したいことはなんでしょうか?

ミユオさん

このマーチに参加するまでに色々あって、いきなりひとりで参加したわけじゃないって話がしたいです。

小綠

どういうことでしょうか? ミユオさんはいつも精力的に女性差別について、ポストされていると思いますが。今回だけじゃなく、デモも何度か参加されているのでは?

ミユオさん

実は今までデモにはあまり参加したことなくて、東京で開かれた1回目のフラワーデモと、こむぎさん主催の国会議事堂前のデモ、今回のマーチで3回目です。

小綠

そうなんですね! やっぱりそれは、外で女性が発言するのが危険だからですか? 何がきっかけで外で発信されるようになったんでしょうか。

ミユオさん

わたしが性自認の問題に興味を持つようになったのは、2018年のお茶の水女子大学トランス女性受け入れの決定について、Twitter(現X)上での議論を目にしたのがきっかけでした。

小綠

あのときは外どころか、Twitter上でもトランスへの発言が危険だった時期ですね?

ミユオさん

そうなんです。当時はわたしも女性の権利などについてほとんど知識もなく、情報収集のつもりで何人かの女性のアカウントをフォローして見ていました。
自分からは趣味や日常についてしか発信していなくて、フェミニズム関連の話題への理解も不十分でした。

小綠

そうだったんですか⁉︎ ではこのあと今のミユオさんになるきっかけがあるってことですね。

ミユオさん

日々Twitter上で女性の権利や尊厳について発信しているアカウントが、誹謗中傷されたり個人情報を暴かれたりしているのを見ていました。
知識もないし怖くて何も言えず、何人もの女性が傷ついてアカウントを消すのを、ふがいない気持ちでただ見ているだけでした。
そんなとき、父親から娘への性暴力の裁判の判決が、軽すぎることに抗議するための女性のデモが開催されると知りました。
いてもたってもいられず、仕事のあとに参加しました。2019年4月のフラワーデモです。

小綠

フラワーデモが、ミユオさんを最初に街に連れ出したんですね! このとき何があったんでしょうか?

ミユオさん

夜の東京駅前は、ウェディングフォトを撮っているひとたちもいるくらい綺麗な夜景でした。
でもそこに集まった女性達は、今回の判決で性暴力が軽く扱われてきたことへの長年の怒りというエネルギーで溢れていました。
ただいてもたってもいられず集まった女性たちが、マイクを回されると、次々と口を開ける様は見たこともない光景でした。

小綠

確か、みんな自分の性被害の話をされたんですよね。

ミユオさん

はい。ある参加者の話を聞いて、今まで他では話せず自分だけで抱えてきたことをことを話し出す女性が何人も後に続くのを見て、女性が話をし、それを聞いてもらえる場がいかになかったかを強く実感しました。
それまで黙って見ているだけだったけれど、せめて今日見た光景や女性たちの声を自分で発信しなければと思って、少しずつ性暴力反対や女性の権利についてTwitter上で発言するようになりました。

小綠

フラワーデモを目撃したのが、大きなきっかけだったんですね。それからネット上での発信が徐々に増えていったんでしょうか。

ミユオさん

はい。長らくネット上で意見する日々でしたが、その中でこむぎさんと出会いました。
そしてこむぎさんが主催した国会議事堂前のデモに参加し、スピーカーを持って議事堂に向かって意見を言いました!

小綠

いきなりスピーカー⁉︎ この時のデモでは何を言ったんですか?

ミユオさん

LGBT法関連です。社民党の大椿ゆうこ議員が、男が女性スペースに入ってくることを不安がる女性達に「お前のその不安に向き合えや!」って言ったのが本当に許せなくて。
議事堂に向かってスピーカーから大椿議員の名前を呼び、落選させると叫びました。

小綠

すご!!!! ミユオさんよっぽどブチ切れてたんですね!!

ミユオさん

めちゃめちゃ怒ってたし今も怒ってます! その怒りがその日わたしがデモに参加した理由です。
その場にはスピーカーを持たない女性も参加していました。でも、発言しないからって言いたいことや伝えたいことがない訳じゃないはず。
その人がこの場に来た理由や決意が自分と同じようにあるんだと、その場に一緒に立って、強く思いました。

小綠

どんどん俺の知る今のミユオさんになってきている! この日はスピーカーで発言された訳ですが、妨害やいやがらせはなかったんでしょうか?

ミユオさん

事前に警察にデモの届出は出されていて、しかも議事堂を警護する警察官の目の前で発言していたので安全でした!

小綠

そして今回のマーチの話に繋がる訳ですが、ミユオさんはどんな形で参加されたんでしょうか?

ミユオさん

9月27日の最高裁で手術要件を無くす審議の前に、どうしても意見したくて行きました。
ただ、この日は横断幕やトラメガは持たずに、後ろの方を歩きました。

小綠

……あれ? いやすいません。その失礼ですけど……前はトラメガで……。

ミユオさん

そうなんですよ。実は少し前にコロナにかかってしまって……。
マーチの日はもう待機期間からけっこう日が経っていたんですが、体力がなかなか戻らず、不調が続いてました。

小綠

えー!! そういう理由があったんですね。でもそれなら、歩くだけでも大変だったのでは?

ミユオさん

正直、めっちゃ大変でした……。日差しもかなり強くて、ルートもよく理解してなかったので、警察に言われるがまま、最後まで歩き切れるか心配でした。
途中警察の人と話したんですが、デモやマーチって途中参加とか途中退出がダメらしいんですよね。

小綠

最初に警察に申請した人数で、最初から最後まで歩かないと駄目なんですか⁉︎
疲れてちょっと休むのが駄目って、体力に自信がないひとからすると結構なプレッシャーですね。

ミユオさん

ですです。というのもあって、今回は一番後ろで、コールへのレスも休み休みで参加しました。

小綠

これまでのことを思うと、そういう参加の仕方って歯痒いとか思いました?

ミユオさん

それがぜんぜんそんなこと思わなかったんです。
とにかく歩き切るのに必死だったのもありますが、このマーチに参加して、参加者のひとりになるだけでよかったんですね。

小綠

ガンガントラメガで叫ぶだけが、マーチやデモの参加方法じゃないということでしょうか。

ミユオさん

まさにその通りです! それを身をもって実感したマーチになりました。
なので、大きな声を出すのが苦手だったり、体力に自信がない人でも、今回の私みたいな参加の仕方ができる活動を増やしていきたいです。

小綠

デモやマーチって、もちろんガンガンいこうぜなひとも多いですが、居てもたってもいられず来てしまったひともいましたね。
そこにいるだけで次に繋がっているのですね。

ミユオさん

いろいろな理由で参加したくてもできなかった人もいると思うんです。

小綠

インスタライブもあったんですよね? そちらでもかなりのコメントをいただいたとのことですが。

ミユオさん

私は参加中インスタライブは見れなかったのですが、マーチに参加したことをポストしたら、たくさんの女性たちから感謝や賛同のコメントをもらいました。

小綠

俺もそうですが、間接的に関わっているだけなのに、今では自分がマーチに無関係であるとはとても思えません。

ミユオさん

現地で参加したのは20人でしたが、その場に来れない人も参加者であると感じるようなマーチになったと思います。
その場にいることに意味があると自分で言っておいてなんですが、マーチから何かを受け取った女性は全員参加者だと私は思います。 

小綠

ええ、勝手ながら俺もそう思ってます。女性たちの連綿と続いてきた活動の根の先、このマーチの先に自分もいるとわかります。

ミユオさん

今まで聞いてもらえなかった、なかったことにされてきた女性たちの声の先に自分がいて、ひとりでここまで来たわけでは決してないんです。
その時自分ができることをしようと思ってした小さな行動が、太い根に繋がっているんです。

小綠

参加していない自分や他の女性たちが、どうしてここまでこのマーチに心を寄せているのか、理由がわかった気がします。
改めて、ありがとうと言わせてください。

ミユオさん

とんでもないです!こちらこそ、こんなに丹念に話を聞いて記録していただきありがとうございました! 私の話が誰かの勇気になったらうれしいです。
そして、マーチやデモの現場に足を運べなくても、誰かが自分のやり方でアクションを起こすきっかけになったとしたら、これは私ひとりだけの話ではなくなります。
私が多くの女性たちから受け取ったものと同じように、女性たちへの次の道しるべになるはず!

こむぎさん

小綠

では最後、こむぎさんの個人的に是非話したいことはなんでしょうか?

こむぎさん

いや実は、コールが成功するのを気にするのでせいいっぱいで、何かやったっていう実感が正直なくて…………。

小綠

は⁉︎ 先頭でマーチを先導されてた写真見ましたよ⁉︎

こむぎさん

コールとコールの間が開かないようにしたりとか、トラメガがうまく回っているかずっと気にしていたんです。

小綠

あ〜〜、主催ならではの悩みや心配が沢山あったんですね! それはめちゃくちゃ色々あったんじゃないですか!

こむぎさん

そうなの?

小綠

そうです! コールの心配って、言う順番は元々決まってなかったんですか?

こむぎさん

デモが始まる直前に決めました。

小綠

直前⁉︎ いきあたりばったりすぎでは⁉︎

こむぎさん

みんなは初めてのデモだし、もしかしたらぜんぶ私が先導してコールをするものだと思っているかもしれないって、始まる前になって思い至ったんですよね。
でもなんかそれは違うなって。
だから私が最初で、その次とその次だけ決めました。

小綠

こむぎさんがぜんぶコールしていたら、アドリブが上手くいくかという心配をしなくてもよかったわけです。何が違うと思われたんでしょうか。

こむぎさん

着いていくのと先導するのは全然違うんです。私はみんなに先導してほしかった。そして、先導する成功体験をしてほしかったんです。

小綠

はー……でもそれって、ずっと心配しなきゃいけないじゃないですか。
マーチの成功のことだけ考えたら、こむぎさんが引っ張った方が効率的ではありますよね。

こむぎさん

私がこのマーチの代表という訳でもなんでもなくて、ただ名前と顔を出してるだけだからです。ここで参加者ひとりひとりが先導することを体験したら、ひとりひとりが強くなれると思うんです。

小綠

ひとりひとりの成功体験……。でもぶっつけ本番で行うのは、かなり心臓に悪いですね。

こむぎさん

私がマーチ当日にぶっ倒れたら、中止になっちゃうようじゃ困るんですよ。だから先導できるひとを増やすのは、実は効率的なんです。

小綠

あ、そっか! こむぎさんには今のマーチだけじゃなく、次のマーチやデモのことまで見えているんですね。

こむぎさん

例え私がぶっ倒れなくても、ひとりひとりが強くなれば、活動が地に足着いて社会に影響を与えられるようになると思います。
これからもひとりひとりが先導するというスタンスで、マーチを行うつもりです。
一度でも成功体験を経験した女性たちが増えれば、そう簡単には崩れないです。バックラッシュにも耐えられる力を得られると思います。

小綠

数は力、ですね。顔も名前も出してるこむぎさんだからこそ、自分以外にも先導できる女性が増えてほしいんですね。
誰が大将でもないというのは、確かに効率的でも上手いやり方でもないのかもしれませんが、市井の女性らしいやり方に思います。

こむぎさん

上手いやり方や効率にこだわりすぎる方が、結局は非効率だと思うんですよね。
この活動は止める訳にはいかないんだから、長く戦える方法を考えてしまいます。

小綠

確かに瞬間最大風速の影響を狙って続かなかったんじゃあ、この活動は意味ないですね。
市井の女性の手弁当でやってる訳ですし、例え時間はかかっても強い根を作らなければ最後まで戦うことはできませんね。

こむぎさん

私たちは権威や権力を持ってないですからね。
何が起こるかわからないからこそ、ひとりだけが力を持っていたら駄目なんですよ。
市井の女性のマーチのやり方なんて、前例がないんだから毎回毎回手探りでやってくしかないんです。

小綠

……市井の女性だけの社会運動のやり方は、自分達で見つけて行動していくしかない。
それは確かに効率を考えて、今だけ成功しても意味ないですね!
これは今、矢面にいるこむぎさんならではのお話でした! 

こむぎさん

矢面に立つのは自分が選んだんでいいんです。
よく矢面に立たせて申し訳ないとか言われるんだけど、私にできないことは他の人がやってくれてます。
それぞれに向いていることをやるしかないんです。

小綠

やっぱりめちゃくちゃ色々考えていたんじゃないですか!

こむぎさん

わはははは! シャオリューさんが聞いてくれたからわかりましたね!

小綠

こちらこそ、ずっと笑いが止まらなくておもしろかったです!
ありがとうございました。

匿名希望Aさん

ミユオさん

あのーちょっといいですか? 匿名希望でお話しされたい方が来てるんですけど……。

小綠

え⁉︎ そうなんですか⁉︎ 入ってもらってくださいよ!

Aさん

こんにちは、匿名希望のAといいます。マーチに参加して感じたことをお話ししたくて来ました!

小綠

えーと、よろしくお願いします……。
あの不躾ですが、前回の『真実』のとき来られなくて、今回匿名希望でのお話をされたいっていうのは……何故でしょうか?

Aさん

色んな理由がありまして。Xのユーザーネームも伏せさせてください。

小綠

わかりました。ではAさんがお話ししたいことは何でしょうか?

Aさん

ちょっとカッコ悪いなと思ってることなんですが……。

小綠

え!! マーチの参加者にカッコ悪いとこなんてないっすよ!

Aさん

と思うでしょう? 集合場所に着いた時から、恐怖でいっぱいでした。

小綠

……それは。いくら警察が守っていたとはいえ、皆さんひとかけらも恐怖がなかったとは思いませんけど。

Aさん

私も、恐怖を感じるのはひとかけら程度で、勇気を持ってマーチを歩けると思ってたんです。
でも、現実は違いました。常に誰かに見られていたので、どこを歩いてても視線がずっと怖かったです。

小綠

……実際に参加していない俺には、察するに余りある、としか言えません。

Aさん

当日の朝、マーチを監視しに行く等のポストが複数回ってきました。
注目度の裏返しだとは分かっていても、正直ビビりました。

小綠

トランス賛成派たちはいつでも色々言ってきますけど、この日は特別怖かったですよね。X上のやりとりとは全然違いますよ。

Aさん

集合場所に着いたら、みんな続々と集まってきました。プラカードに書くフレーズを考えたり、コールの一覧に目を通したり、和気藹々としてました。
そのとき後ろから「サングラス持って来れば良かった」という声が聞こえたんです。その一言で一気に現実に引き戻されました。

小綠

……マーチの写真を盗撮されたり、顔を晒されたりという意味ですね。

Aさん

その声を聞いて、私は持参したサングラスをかけました。本当は、他の人に貸せるよう余分にサングラスを持ってきていたんです。
でも、その時は全く気が回らなくて、カバンに入っていることすら忘れていました。自分のことで精いっぱいでした。後悔してます。

小綠

まず自分の身は自分で守るのが原則です。自分を下げるのは違いますよ……。

Aさん

その後、出発時刻になり、マーチを歩き出しました。
大通りを歩いてしばらくして、ガード下を抜ける曲がり角の歩道部分に差し掛かると、たくさんの人がカメラをこちらに向けて待ち構えていました。

小綠

え⁉︎ そんな話聞いてませんよ!
トランス賛成派がまとまってカメラを向けて来たんですか⁉︎

Aさん

トランス賛成派かどうかは分かりません。通りすがりの買い物客かもしれないし、観光客かもしれません。
ただ、ものすごく「待ち構えられていた」ことを強く感じました。

小綠

……今となっては確かめようがありません。しかし重要なのは、事前の嫌な予感が、現実になってしまったということですね。

Aさん

はい。そこでものすごく怖気付いてしまいました。
マーチはシュプレヒコールを挙げながら歩いていて、少しずつみんなの声が大きくなっていたところでした。
でも、自分はたくさんのレンズから向けられた威力におののいて、だんだん気が散ってしまいました。

小綠

ふつうそれだけの人たちに凝視され、記録を取られることなんてありません。
実際に隠し撮りはされていた訳ですし、その恐怖は当然のものでしょう。

Aさん

大きい望遠レンズつきのカメラを持った人が、車道を歩く私たちのペースに合わせて、並走してきてるのが見えました。

小綠

え、キモ!!

Aさん

歩道からカメラを向けて、並走して動画を撮影してたんです。

小綠

は???? いやまじでキモいけど、それは警察も気づいていても何もできないやつ……。大丈夫でしたか……?

Aさん

撮影だけで、危害を加えてきたわけじゃないですからね。
ずっと視線を集めてるという緊張感に加え、歩きながらシュプレヒコールを上げているので、このあたりから私は体力的にヘバってきたんです。

小綠

あー……たしかこの日、天気もよかったんですよね? それは確かにしんどい……。

Aさん

マスクの中は常に酸欠状態。かといって、カメラの前でマスクを外して顔を出すわけにはいかない。
水を飲むためにマスクを外すのも怖くて。水分補給にと思って持ってきた水2本がとても重く感じました。
さらに信号が変わるタイミングで最後尾にいた警察官の方に「信号変わるから早く歩いて!」と促され、不定期に走らされるのも地味に疲れました。

小綠

水1リットル背負って、叫びつつ時たま走らされるとか、何かの修行ですよ。

Aさん

マーチに来たら実はトレーニングだったという。

小綠

その大変言いにくいのですが、このままマーチが終わるまでずっとしんどい思いをされたのですか……?

Aさん

いいこともありました。西口の横断歩道あたりで、訪日観光客と思しき年配のご夫婦がいたんです。
英語のプラカードに、サムズアップのポーズをくれたのが目に入りました。それまでずっとカメラを向けられていて苦しかったので、応援してくれる気持ちが伝わってきて、ありがたかったです。

小綠

ああ、よかった……。

Aさん

そこから15分ほど歩いて、南口に向けて少し坂に差し掛かった頃には、背負っている水がとても重く、本格的にへバっていました。
ここでびっくりする光景を見たんです。

小綠

トランスフラッグですね!

Aさん

そうです。大きなフラッグが2枚も出ている上に、さらに望遠レンズのついたカメラを向けられていることに驚きました。
へばってる状態でそのフラッグを見たことで、気持ちが沈み、最後まで立て直せませんでした。

小綠

ここでとうとうトランス賛成派がその姿を現した訳ですが、ほんと連中信じられないことをしますね。

Aさん

ここまでやるのか、と思いました。

小綠

全くその通りです。どんな女でも、ここまではしないでしょう。

Aさん

カメラやスマホで撮影されるのだろう、と覚悟はしていました。でも、明らかに意見の異なるマーチに向けてフラッグを掲出するのは嫌がらせです。
マーチの主張は誤っているのか? 女性たちがマーチを歩いて意見を表明することは、嫌がらせをされるくらい正しくないことなのか? 
明らかな悪意に晒されて、このマーチには価値がないのかと、感情が乱降下しました。疲れていたこともあって、余計にショックを感じやすくなっていたと思います。
これ以降、最後までテンションが上がらないまま、マーチが終わりました。始まる前は、いろんな恐怖心があったとしても、気にせずマーチを歩けると思っていたので、結局気持ちを立て直せなかった自分がカッコ悪いです。

小綠

……最初にカッコ悪い話っておっしゃってたのは、こういうことだったんですね。

Aさん

そうです。でも、それだけではなくて、感情が乱降下している時に、また別の気持ちも湧いてきました。

小綠

と、言いますと?

Aさん

自問自答したんです。このマーチは誤っているのか? 価値がないのか? 嫌がらせされるほど正しくないのか? という疑問が浮かび、本当にそうなのか? と、背中に背負っている水の重さを感じながら、心の中で考えました。
自分の答えは、マーチは誤ってなどいないし、有意義なものだし、嫌がらせを受けるべきものではないのだから、より良いものにしたいという気持ちが湧きあがってきました。

小綠

気持ちが立て直せないまま、より良いものにしたいと考えた⁉︎ どういうことですか⁉

Aさん

ゴールまでの残りの距離からいって、気持ちを立て直す時間は無いなと判断しました。でもそのまま終わるのは悔しくて、何かポジティブな要素を見つけたかった。
これからのマーチやデモをより良いものにするにはどうしたら良いか、頭が猛烈に回転を始めた感じです。

小綠

どんなに感情が落ちていても、思考は止まらなかったんですね! どんなことをすればより良いものになると考えられたんですか?

Aさん

トラメガは大きいものが良いなとか、コールは2回繰り返して言おうとか。似たようなコールは表現を統一しても良いかも、などなど。
マーチを歩いたからこそ肌で感じたことです。

小綠

わははは! 残念ですが、これはまったくかっこ悪い話なんかじゃないですね。
どれだけ脅そうが、女の方は次を考えていたって話なんですから!

Aさん

ずっと自分の中でカッコ悪い話だと思っていたので、途中参加という形になりました。
でも、今振り返ってみると、次に向けてより良い方策を考えていた自分を認識できて、カッコ悪さが少し和らぎました。

小綠

カッコ悪くてもお話ししようと決めて下さって、ありがとうございます。
確かにこのお話は、聞いていて昂るような内容ではありませんでしたが、どんなに恐ろしくても闘志を失わないお話だったと思います。

Aさん

自分の中で、どのような状況でも次に活かそうという気持ちが湧いてきたんだと認識でき、改めて振り返ることでマーチの意義を感じました。

小綠

読んでいただいた皆さんに、最後に伝えたいことはありますか?

Aさん

マーチに参加しながらたくさんのことを考え、様々な気持ちを感じました。カッコ悪いと感じたことも含め、参加したことは自分にとっての誇りです。

小綠

本日はお話ししていただき、ありがとうございました!

匿名希望のコメント

小綠

ここからは匿名希望の方に、マーチのご感想をお伺いしました。
形としては先に下記の質問をして、それに答えていただきました。
それではどうぞ!

  • あなたにとってこのマーチはどんなものだったか。
  • マーチではあなたに何が起こったか?
  • これだけは特筆して言っておきたいこと。

匿名希望Bさん

あなたにとってこのマーチはどんなものだったか。

今までデモなどの政治的な活動に参加した事が無かったので、人生初のデモ・マーチでした!

マーチではあなたに何が起こったか?

「女性が女性の人権・生存権を守るために声を上げても良いんだ、行動を起こしても良いんだ!」と思いました。
自分を縛っていたものから解放された気持ちになりました!

これだけは特筆して言っておきたいこと。

これまでにも生物学的女性だけでデモを開催して下さっている事を知っていましたが、X上での脅迫行為を目の当たりにし、怖いと思う気持ちが強く、参加したのは今回が初めてです。

参加することを決めたのは、「どうせ匿名だから」と軽んじられ、存在しないことにされている現実をなんとか打開したいと強く思ったからです。

志を同じくする仲間と共に声を上げ、街を歩き、自分でも驚くほど勇気づけられました。
そして、とても楽しく充実した時間になりました。

今でも怖いと思うが吹っ切れた訳ではなく、不安な気持ちはあります。
しかし、子どもたちにも怖い思いをさせ続ける訳にはいきません。
私たちの世代で終わらせなくては!

これからもデモ・マーチに参加し、性別の変更を是とする社会に抗い、女性の人権・生存権について訴えていきます。

困難な状況の中、安全第一で開催できるよう準備して下さった方々、本当にありがとうございました!!!

匿名希望Cさん

あなたにとってこのマーチはどんなものだったか。

とても意義あるものでした。
志を同じくする女性たちと一緒に行動できたことはかけがえのない経験になりました。
画面を見ているだけでは不安になることも多いのですが、いつもオンラインで繋がっている方々と直接顔を合わせ、声を掛け合いながらともに行動できたことは非常に貴重な経験です。
一人ではない、おかしなことは言っていないと勇気づけられました。

マーチではあなたに何が起こったか?

私自身がものすごくエンパワメントされました。
マーチ中もカウンターによる威嚇もありましたが、そんな中でも堂々と自分が常日頃思っていることを大声で何度もコールできたことで自分たちの行動への自信と、相手の卑劣さに確信が持てました。

これだけは特筆して言っておきたいこと。

とはいえ、怖い気持ちもあったのは事実です。そのため、当日はなるべく顔が出ない工夫をしていました。
本当は怖い思いをしてまでマーチをしなくてはならないで済む社会になるべきです。

間違ったことは言っていないのですが、どのような形で報復してくるかも分からない、話の通じない相手が多いため、身を守るためにも顔を出せないジレンマがあります。
私にはできない顔を出して本名でこのマーチの正当性を語っている女性たちには感謝と尊敬しかありません。

もっと堂々と間違っていることを間違っているといえるように、今できることをやっていきたいと思います。

匿名希望Dさん

あなたにとってこのマーチはどんなものだったか。

私は特例法がそもそもの問題だと思っていたので、このマーチは特例法反対前提でやると聞いてそれならぜひ参加しなければと思いました。

マーチではあなたに何が起こったか?

そうですね、当日までは正直新宿のど真ん中を横断幕掲げて歩くなんて大丈夫だろうかと心配していました。

その前の国会前デモにも参加しましたが、カウンターに遭う危険性は一番高いだろうと思いました。
海外の女性デモにおいても活動家による暴力的な妨害が起こっていたので、正直とても怖かったです。
そして集合場所に到着したら、私服警官含め6,7名?ほどの警官達がいました。これほど「お巡りさん」を心強く思ったことはありませんでした(笑)
そしていよいよ出発…カーブに差し掛かるところで一緒に歩いていた女性が「いるいる..」というようなことを言いました。

あまり見ないようにしていましたがカウンターがいたようです。あと歩道橋の上にもトランスフラッグを掲げている人がいましたね..。

隠し撮りもされていたようで当日夜Xで晒されていました。活動家らは自分たちも警察からチェックされているとは思わなかったのでしょうか。
それでも「女性だけの女湯を返せ」「特例法が諸悪の根源」などを路上で訴えることができたこと、とても大きな成果だったと思います。

一方で主催してくださった女性が矢面に立って攻撃を受けておられること本当悔しくてたまりません。

活動家らにはとにかく「卑怯な真似はやめろ(太字)」と言いたいです。

これだけは特筆して言っておきたいこと。

私はこの問題を注視し続けてかれこれ5年になります。

初期の頃は活動家による攻撃も激しく、ネットリンチと言ってよいものでした。

「ターフは人にあらず」「肥溜めに堕ちろ」「ナチス」「水晶の夜」「ターフを叱りつけるのは当然」というような罵詈雑言がジェンダーイデオロギーへの疑問を口にする女性達に向けられていました。

女性達の中には深刻な性被害者もおり、失意と恐怖の中アカウントを消す方も少なくありませんでした。

そんな中でも屈しなかったオピニオンリーダーとも言うべき女性達が女性の人権機関からも槍玉に挙げられ、まさに女性の人権侵害が行われるという事態も起こっていました。

それでも無名の女性達の無数の言葉が他の女性達の言葉に繋がっていき、運動は広がり現在に至っています。

「女性達のバトン」だと表現した女性がいますが、まさにその通りだと実感しているところです。

市井の女性達が自身の抑圧の経験を自分なりの言葉にして話すこと、その言葉は取るに足りないものではないんだと実感すること、そしてそれが他の市井の女性達のエンパワメントに繋がっていること。

キラキラした修辞や専門用語がなくとも、市井の女性一人一人の心の内から出た言葉ほど強いものはないと信じています。

参加者のXのポスト

小綠

ここからは、Xにポストしたマーチの感想を引用させていただきます!

次も、市井の女たちから始めよう

小綠

皆さん本当にありがとうございました。
こんなにさまざまな形でマーチの話を聞けるなんて思いませんでした!

ミユオさん

こちらこそブログの執筆を提案してくれて、本当に本当にありがとうございました。自分でも思わない話ができました! 

詩織さん

私も自分でも思っても見なかったようなお話を引き出していただいて、とても読み応えのある文章になったのではないかと思います。

こむぎさん

マーチに参加したひとじゃないと体験できないことを、このブログを読んだ人に伝えられたかと思います。

Aさん

私は自分の感情を言葉にして振り返ることができて、改めてマーチの意義を強く感じました。

小綠

マーチはまだまだ続くので、これからも市井の女性たちの活動を記録していきたいと思います。
フェミニストじゃないと残せないお話になると思うので、今後もマーチがどうなるのか追い続けます!
では次の記事でお会いしましょう!

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